■3つのタイムマシン■
タイムマシンには、大きく3つのタイプがある。1人乗りの小型タイムマシン、『タイムライン』や『タイムトンネル』に登場する据え置き型タイムマシン、そして『気合い』による人力タイムマシンである。この中で、人力タイムマシンだけは、原理がまるで違う上、ドラマや映画ではほとんど見かけない。さすがに、『気合いでタイムトラベル』では、誰も観ないからだろう。ところが、このネタで成功した映画もある。さすが、映画の世界は奥が深い。1981年公開の『ある日どこかで』で、原題は『Somewhere in Time』となっている。
主役は、映画『スーパーマン』のクリスファー リーブ、『007』のボンドガールで美人の誉れ高いジェーン シーモア。タイムトラベルものでは珍しいラブロマンスとなっている。公開当初は、世界はもちろん、日本でも話題にならなかった。ところが、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』同様、後になって、一部の熱心なファンに支持されるようになる。世に、愛する2人を分かつ障壁は山ほどあるが、それが『時空』というのがミソだ。丁寧に作られた映画で、どのカットも完成度が高い。筋書きはラブロマンスだから適当に、という手抜きもない。独自の世界観があり、大枠もしっかりしていて、好感がもてる作品だ。
■人力タイムマシン■
主人公リチャードは、脚本家を目指す大学生だった。ある日、見知らぬ老婦人が、彼に時計を手渡し、「帰ってきて」という言葉を残し去っていく。その8年後、リチャードは町のホテルで、1枚の肖像画に心を奪われる。その絵には、美しい女性が描かれていたが、彼女はそのホテルの舞台を中心に活躍した女優だった。しかし時代は1912年、つまり、彼とは別世界に生きた人間だったのだ。それでも、彼女を忘れられないリチャードは、タイムトラベルを決意する。それも、『気合い』によるタイムトラベル。彼は、大学時代の恩師から、タイムマシンの作り方を聞き出すが、なんと、自己催眠による人力タイムマシンだった。
この映画の中では、タイムトラベルの原理は一切触れられていない。だが、原理を自己催眠におくなら、理論的なバッググランドは心理学だ。一方、タイムトラベルそのものは物理学の世界であり、心理学と物理学のブリッジ理論も必要だ。だが、この映画を観ていると、無粋な理屈はどうでもよくなる。この映画の良さは、タイムマシンの原理や理論にあるのではないから。
リチャードは服装、持ち物すべてを、当時にものと交換し、彼女が生きたホテルの一室にこもる。次に、自己暗示により催眠状態をつくりだし、時間と場所を呪文のように唱える。そして、ついに時空を超えたのである。その時代で、リチャードは念願の肖像画の女性と恋に落ちるが、彼女こそが、リチャードに時計を手渡した老婦人であった。やがて、物語は思いもよらぬ結末へと向かう。
このような『人力タイムマシン』は、技術系SFオタクからは、邪道だ、と非難を浴びるに違いない。だが、この映画とよく似た実話?も存在する。
1901年8月10日、真夏の暑い日、場所はフランスのパリ郊外にあるヴェルサイユ宮殿。イギリスから観光旅行に来ていた2人の女性は、のんびりと宮殿を散策していた。2人は女子カレッジの学長と副学長で、シャーロット モバリーとエレノア ジョーダンといった。2人は、古風で美しいヴェルサイユ宮殿を十分堪能し、帰国する。
そしてその3年後、もう一度ヴェルサイユ宮殿を訪れた2人は驚愕する。周囲の風景がすっかり変わっていたのだ。古風な服装に身を包んだ人々もいない。やがて、2人は、その時見たヴェルサイユ宮殿が現実であり、3年前に見たのは、1792年8月フランス革命当時のヴェルサイユ宮殿だったと確信する。3年前にテラスで見かけた美しい女性は、マリーアントワネットの肖像画そっくりだったからである。つまり、別時空の世界に迷い込んでいたのだ。2人は100年前にタイプスリップしたと信じたが、散策中は、気分が重く、夢遊病者のような歩き方をしていたという。むろん、この事件に物的証拠はない。唯一のよりどころは、証言した2人が教育者であり、気軽にホラなど吹かないだろうという信用にあった。
また、歴史上最も有名なタイムトラベラー、サンジェルマン伯爵も『人力タイムマシン』の部類かもしれない。彼のタイムマシンを見た、という目撃証言がないからだ。一方、サンジェルマン伯爵の部屋から奇妙な音が聞こえたという証言もあり、タイムマシンを所有していた可能性はゼロとは言えない(限りなくゼロだが)。
サンジェルマン伯爵がタイムマシンの作り方を知っていたかどうかは別として、実在した人物である可能性が高い。サンジェルマン伯爵は、18世紀のヨーロッパ世界に現れた人物で、
「紀元前1000年のイスラエル王国や、紀元後1100年の十字軍の時代にもいた」
と語ったという。また、錬金術や薬物の研究にも長けていたらしい。この怪しげな人物は、歴史上著名な人物たちにも目撃、記録されているため、それなりの信憑性を得ている。話が長くなったが、ここで言いたいのは『人力タイムマシン』は決して邪道ではないというだ。
■据え置き型タイムマシン■
とはいえ、タイムマシンの世界では、やはり、人力タイムマシンはマイナーと言わざるをえない。正統派SFオタクが、真にワクワク ドキドキするのは、やはり本物の?タイムマシンだ。ここでいう本物のタイムマシンとは、原理が理論的に説明され、大がかりでうっとりするような巨大なマシンをいう。むろん、ナンバーワンはTVドラマ『タイムトンネル』だ。タイムマシンの歴史上?最大にして最強、そして最も不安定でハラハラ ドキドキ、タイムトラベルの神髄がここにある。
『タイムトンネル』は、アメリカの国策タイムマシンで、アリゾナ砂漠の地下深く、800 階建ての巨大センターに収められていた。まさに超弩級の世界、これ以上の巨大なタイムマシンはない。むろん、ストーリーまで大味というわけではない。第8話 『秘密兵器A−13』で、主人公のダグが『タイムマシンの作り方』を講釈するシーンがあるが、技術系SFオタク必見である。また、時代考証もしっかりしており、歴史が好きな人にもお薦めだ。
もう一つの据え置き型タイムマシンが、映画『タイムライン』だ。こちらは、原作がベストセラー作家マイケル クライトンで、CGは ILM が担当している。過去にタイムスリップした教授を救出するため、学生たちが14世紀の世界にタイムトラベルするというストーリーだ。このタイムマシンは、据え置き型にしては小ぶりで、一部屋ほどのサイズ。動作原理の説明に、量子力学まで動員しているが、やはりツメは甘い。ただ、原作が面白いので、退屈しない映画だ。
■1人乗り小型タイムマシン■
そして、タイムマシンの真打ちといえば、HG ウェルズ原作の『タイムマシン』。時間の壮大さを感じさせるという点で、これを超えるものはない。そのため、1960 年、2002 年と、2回も映画化されている。1960年の作品は、すでにSF映画の歴史年表を刻む名作となっている。一方、2002年の作品は、多少脚色はあるが、CGはおなじみの ILMだ。映像に品があり、世界観もしっかりしていて、前作に優るとも劣らない。
この2作で使用されたタイムマシンは、大型バイクを一回り大きくしたほどの1人乗りタイムマシンだ。新作では、主人公がタイムマシンを作り込むシーンがあるが、タイムマシンの作り方、つまり原理や理論は深掘りされていない。
この小型タイムマシンは、ドラマや映画でもっともよく見かけるタイプで、『ドラえもん』に登場するのもこのタイプである。世界中で大ヒットした三部作『バックトゥーザフューチャー』もこれで、実在した伝説の名車『デロリアン』を改造したタイムマシンとなっている。このように、様々なタイムマシンが存在するが、やはり一番の関心事は、本物のタイムマシンが作れるか?である。
■未来へのタイムマシンの作り方■
未来に旅するタイムマシンは、すでにメドはたっている。その方法は2つ。光速に近いスピードで移動するか、強い重力場の中にいれば、確実に未来に行ける。あと、邪道だが、冬眠カプセルという手もある。
光速移動によるタイムマシンの原理は、たいてい次のように説明される。宇宙船に乗り込み、光速で飛行、往復20年で地球に帰還すると、地球では2000年が経過している。結果、2000−20=1980年分だけ未来にタイムスリップしたことになる。この現象は、高速で移動している世界では、時間の進みが遅くなるというアインシュタインの相対性理論で説明される。
この原理は、冬眠カプセルのように、細胞の活動が低下し、老化が遅れるというレベルの話ではない。移動中の世界すべてで、時間の進行が遅くなるのである。このような時間の遅れは、強い重力場の中でも起こる。地下に住む人は、地上80階で暮らす人より地球の強い重力をうける。そのため、地下で住む人の時間は遅く進み、その分長生きできる。むろん、誤差の範囲だが。
いずれにせよ、これで、未来へのタイムマシンの作り方は完全に立証された。ただ、一つだけ問題がある。未来世界に行ったが最後、過去には戻れないことである。
■過去へのタイムマシンの作り方■
一方、過去へのタイムトラベルは、かなり難儀だ。すでに、跡形もなくなった世界へ、どうして行けるというのだ?ところが、1988年、カリフォルニア工科大学のキップ ソーンらが、過去にも行けるタイムマシンの作り方を提唱した。町の自称発明家ではなさそうだし、まともな論文なのだろうが、こんな研究が行われていること自体、不思議である。一方、科学者たちの気分転換ネタ、というウワサもある。
過去へのタイムマシンの作り方の第一ステップは、ワームホールの生成から始まる。原理は次のとおり…
まず、ブラックホールを2つつないで、事象の地平面が1つになるようなワームホールをつくる…これを読んで仰天した人は、ちゃんと理科を勉強した人だ。とはいえ、ここで考え込んでは始まらない。とにかく、ワームホールが2つできたとして、ワームホールの2つの入口を、それぞれA、Bと呼ぶ。次に、Bの入口だけを光速で運動させ、元の位置に戻す!?ここで一息入れたいが、そうすると思考の連鎖が途切れ、意味不明となる。先を急ごう。
アインシュタインの相対性理論によれば、光速で運動する物体の時間は遅れるので、Bの入口は、Aの入口よりも時間が遅れることになる。そこで、そのときの時刻をAで午後6時で、Bで午後3時とする(Bの方が3時間だけ時間が遅れていることに注意)。次に、Aの入口にいた人が午後6時にBの入口に向けて出発し、1時間かかって、Bの入口に飛び込んだとする。このとき、飛び込んだときのBの時刻は午後4時(午後3時+1時間)になっている。ワームホールの両方の入口は同じ時刻でつながっているので、飛び込んだ人はAの入口から出ると、午後4時となる。ここで、この人は、午後6時に出発したのに、午後4時に同じ場所に立っている。つまり、2時間だけ過去の世界に戻っている!?
これを一読して、「なるほど」と唸る人はすこぶる頭のいい人だ。確かに、文章はつながっているが、それだけのことで、なにか騙された気分だ。つらい話の後で言いづらいが、このタイムマシンの作り方には、もう一つ問題がある。得体の知れないブラックホールをどうやってつなぐのだ?ブラックホールをどうやって光速で移動させるのだ?など些末(さまつ)なことではない。ワームホールを生成した時刻より、過去へは行けないということだ。つまり、2006年3月にワームホール型タイムマシンを作った場合、2006 年3月より過去には行けないのだ!?
「これで、過去の世界へ行けると言える?」と思う人は、まともである。根本的な所で矛盾している。だが、科学者たちはこう反論するだろう。「宇宙のどこかに、昔できたワームホールがあるはずだ。それを使えばいい」
この説に、これ以上深入りするのはやめよう。学はなくとも、本物かニセ物かの区別ぐらいはつく。つまり、この過去へのタイムマシンの作り方を、論ずることそのものが不毛である。また、このような研究に、多額の研究費が消費されることがないよう願っている。
■時間のパラドックス■
タイムマシンの作り方をクリアしたとしても、タイムトラベルにはまだ問題がある。『時間のパラドックス』だ。1958年、ジャック キルビーはエレクトロニクスの革命、ICを発案する。歴史を刻んだ世界的な発明である。ここで、誰かが『タイムマシン でお金儲け』をもくろみ、1957年にタイムトリップし、ICの特許を出願したとする。それでは一体誰がICを発明したことになるのか?このコソクな人物は、歴史年表を盗み見しただけで、ICを思いついたわけではない。むろん、ジャック キルビーもこの栄誉からはずされる。彼の開発は1年後になるため、彼は他人の論文を見て ICを知ることになる。それでは一体、ICはどこから生まれたのだ?
車イスの物理学者ホーキング博士は、過去へのタイムトラベルは不可能だとする『歴史保存仮説』という理論を発表した。原因と結果の連鎖が崩れてしまうからだ。先の問題も、結果が原因に直結するから、おかしなことになるのだ。原因は原因、結果は結果、いっしょくたにしてはいけない。タイムマシンにからむ話は、物理と哲学がボーダレスの恐ろしい世界である。
■空間の謎■
理工系の大学に入学すると、『初等力学』なる科目が待ち受けている。『初等』とは名ばかりで、高校の物理など吹き飛ぶほど難解な世界だ。理論の厳密さがまるで違うのだ。本物の数学を用い、水も漏らさぬ論理でたたみかけてくる。高校の数学が少し得意という理由で、理工系に進むのは薦められない。人間らしい青春を謳歌するなら、文系に限る。
この『初等力学』で面食らうのが、空間の歪曲である。強い重力場の周辺では、空間が歪曲するのだが、目に見えないものが曲がることをイメージするのは難しい。空間の歪曲で極端なものが、先の過去へのタイムマシンの作り方で登場したブラックホールだ。ブラックホールは、よく聞く宇宙用語だが、観測されたわけではない(2006年3月時点)。ただ、理論上存在することはわかっており、たぶん現実にも存在するだろう。
ブラックホール理論によると、ブラックホールの構造は、いたってシンプルである。中心にある『特異点』と、その周りに『事象の地平面』があるだけ、と考えられている。ここでいう『特異点』とは、密度が無限大の点である。点のくせに無限大とはなんだ、と非難されそうだが、だからこそ特異な点なのである。とにかく、密度が無限大なので、とてつもない重力場を生成し、その結果、空間を極端に歪曲させている。このブラックホールの内部と、外世界との境界が、先にのべた『事象の平面』となる。何のことだかさっぱりで、主語と述語の区別しかつかない。
理論はともかく、ブラックホールに、宇宙船が近づくとどうなるのだろう。宇宙船がブラックホールの中心に近づくにつれ、重力も大きくなり、それにつれ、時間も遅れだす。そして、最後には、宇宙船の時間は停止する。つまり、ブラックホールの中心点は、時間が止まった世界なのだ。冷静に考えると、そら恐ろしい世界だ。時間が停止した世界では一切が変化せず、時間の概念、存在の概念すら、あやしくなる。想像を絶する世界だ。
■時間の謎■
ところで、『時間』は、本当に存在するのだろうか?『時間』は、時計で間接的に計っているだけで、『時間』を直接見た人はいない。
昔、机の上に小さな虫が忙しそうに動き回っていた。気にはなったが、無用な殺生はしない主義なので、そのままにしておいた。すると、翌日には死に、日を経るにつれて、どんどん変形し、やがて干からびてしまった。数日間という時間が経過することで、虫が変形したのだ、とわれわれは考える。もし、『時間』が虫に直接作用し、虫を変形させたのなら、確かに『時間』は存在する。だが、虫を変形させたのは、大気の成分であり、時間そのものではない。それでも、『時間』は存在するというのだろうか。
この世界では、「時は流れる」という言葉が使われる。ある瞬間が、時間が流れることで過去となり、別の瞬間が新たな実在となる。つまり、過去、現在、未来と、時間が流れているだけで、実在するのは現在のみ、
ところが、科学者たちは、このような『時間の流れ』は幻想だと考えている。過去、現在、未来、いずれも等しく現実だというのだ。つまり、『時間』は流れているのではなく、『空間』とともに実在する。まるで、SFネタの多次元世界だ。むろん、あくまで仮説で、厳密な理論の裏付けがあるわけではない。それでも、過去、現在、未来、いずれも現実として存在するなら、タイムマシンを作る方法がないとは言えない。
また、科学者たちは、『プランク時間』という時間の最小単位まで決めている。10のマイナス43乗秒というとてつもない短い時間だ。現在、高速のトランジスタは、ピコ秒の世界で動作するが、ピコ秒は10のマイナス12乗秒、つまり、1兆分の1秒。プランク時間が、いかに恐ろしい『短時間』であるかが分かる。
■予言は可能か■
ややこしい話のついでに、予言の世界にも話を広げよう。現在、ミクロの世界を説明する最強の理論は『量子力学』だが、数学自慢の学生を打ちのめすことで有名だ。この中に『不確定性原理』という、絶句するほど難解な理論がある。二枚目のドイツ人物理学者ハイゼンベルクが確立したものだ。本当は、数学の塊なのだが、一言で片づけると「未来世界は予測不可能」となる。
2006年トリノオリンピックで、日本のカーリング娘が話題になった。余談だが、カーリングがあれほどはまるスポーツとは思わなかった。ということで、カーリングを例に話をすすめよう。
相手のストーンに、自分のストーンをぶつけるとして、その後の2つのストーンの動きを正確に言い当てることは不可能、というのがこの理論の核心だ。自分のストーンと相手のストーンの位置と、ストーンの速度や角度が正確に分かれば、100%予測できそうなものだが、これができないというのだ。
衝突後の2つのストーンの動きには、無数の可能性がある。そして、それぞれの可能性が現実となる確率も計算できる。むろん、一番確率の高い可能性が、現実となるとは限らない。実際にやってみないと分からないのだ。言いかえれば、現実に衝突が起こり、それを人間が観測してはじめて、未来は決定され、過去となる。だんだん、物理学か哲学か分からなくなってきた。そもそも、『タイムマシンの作り方』などという得体の知れないをテーマを扱うから、話がややこしくなるのだ。小難しい話はこれでおしまい。タイムマシンの世界には、もっと面白い話がある。
■ジョン タイター事件■
2000年、アメリカのインターネット掲示板に、突如、タイムトラベラーが現れ、ジョン タイターと名乗った。彼は2036年の未来から来たと宣言し、掲示板は大いににぎわった。ジョン タイターはすでに、自分の世界に帰還したことになっているが、その間、多くの情報を公開した。タイターが乗ってきたポータブル タイムマシンもその1つで、写真や図面まである。つまり、タイムマシンの作り方まで公開したわけだが、タイムマシンを完成させたというニュースは、いまだに聞かない。もっとも、タイムマシンを完成させたら、人知れず使うに決まっている。
また、ジョン タイターは未来も予言している。そのいくつかは適中したが、どれも当時の世界情勢から十分推測できるものだ。一方、当たりはずれがまだ確定していない予言もある。その1つが「中国が台湾、韓国、日本を征服する」、なかなかインパクトのある予言だ。原文には『conquer』という単語が使われているので、明かに武力征服だ。最近、中国の軍事予算は増える一方で、逆に、アメリカは、ブッシュ政権の反動で世界の警察を辞めざるをえなくなる。そこがターニングポイントだ。70年前の日本と中国の歴史を思い起こせば、「因果は巡る」かもしれない。
さらに、2015年にはアメリカ、中国、ヨーロッパ、ロシアの間で、全面核戦争がおこり、30億人が死亡する、というのもある。つまり、世界のおわり、である。こちらは、ホラ吹きタイムトラベラーのヨタ話ではなく、真摯な未来警告ととらえるべきだ。
「核を使えば、使った方も滅びる。均衡した現代の外交において、そんなバカなことが起こるわけがない。核はあくまで外交カードだ」
などという戯言(たわごと)を、まともに信じている政治家や評論家がいるから恐いのだ。
われわれは、1962年10月から始まったキューバ危機を忘れている。あの時は、指導者がケネディとフルシチョフだったから世界は救われた。ブッシュとブレジネフなら間違いなく全面核戦争だ。歴史を決定づけるのは国益ではなく、指導者の資質なのだ。
核戦争は、地球が全く想定外の世界に変質しないかぎり、必ず起こるだろう。理由はただ一つ、核が存在するからだ。それは、整然とした歴史の方程式の結果ではなく、指導者のちょっとした心のブレで勃発するかもしれない。つまり、予測不能である。
ジョン タイターが本物か偽物かは、インターネット上で多くの議論をよんだ。彼は、自分が乗ってきたタイムマシンの写真まで公開したが、それを本物と信じた人はいないだろう。どうせ写真を出すなら、なぜ、未来に起こるニュースや町にしないのだろう。それなら、世界中が信用しただろうに。
個人的には、ジョン タイターがタイムトラベラーとは信じてないし、その予言もあてずっぽうだと思っている。『ロズウェル事件の宇宙人解剖フィルム』同様、初めから見せるために作られた偽装の臭いがするからだ。むろん、的中する予言もあるだろうが、結果が一致しただけで、予言そのものを証明したことにはならない。それでも、一つだけ気になる予言がある。全面核戦争と、その後の分断された閉鎖社会だ。そう、ジョン タイターが語った未来は、あまりにも暗い。
参考文献:日経サイエンス2002/12『時間とは何か』
:田中三彦/武内孝夫 共著『タイムトリップ』学研
by R.B |